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ルメートル「炎の色」

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 ルメートルの作品は評判がよかったので、文春文庫にある作品は全部読みました。ですが、なんか違うなあという気持ちがぬぐいきれません。確かに面白いのだけど、無理して書いているような気がしました。

 でハヤカワ文庫、最近の製本のずさんさにうんざりしていたんですが、ブックオフで「天国でまた会おう」上下が108円であったので、まあいいかと買って読み、、、これが大正解で、こちらが本流の気がしてきました。

 で、次が「炎の色」です。読み終えた方々の感想は「うーん」というものが多かったようですが、これはいわばヴェルディの「ドン・カルロ」みたいなもので主役のマドレーヌは話の進行は努めますが、大したことはなさない。そのかわりほかの人物がめっぽう面白いお話です。

 自分はたいていのオペラは聞きましたから、ポール・ペリクールがオペラにのめり込む様子も興味深かったし、デュプレの言動もいきいきとしてうれしかったものです。そして、なんといっても歌手「ソランジュ・ガリナート」の造形です。

 最初は「ノルマ」のアリアから始まるので、モデルがカバリエかカラスか?と思いましたがSPの時代ですから、多分ローザ・ポンセルを基にしたんでは?とにやりとして読み進めていきました。ポンセルはほとんどメトロポリタンで活躍した方ですから、ナチズム化したドイツでのソランジュの歌唱は完全にルメートルの創作だし、当時ヒットラーを前にあのような行動を行えた者はいなかった、とは思ってもスリルがありました。

 そのあたりの知識というか、時代性というかをふまえないと、まあ読むのに苦労するだろうなあという気がします。